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2010年7月24日 (土)

【桜姫華伝】〔種村有菜さん〕第二十一話「君は雪のように白く、炎のように黒い姫君」(りぼん2010年8月号)感想 その1

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○着々と結婚への準備を進める朝霧と右京

 婚礼の儀に月長石の首飾りを用意するため右京は月長石の堀場
に行っているのですが、餓鬼婆(がきばあ)の姿を見たと言っているので
朝霧はすごい不安なようですね。いくら右京が安心だと言っていると
しても、朝霧にしてみれば愛する人が危険な目に遭(あ)うのは
心配で仕方がないでしょう。もし万が一のことがあったらとてもじゃ
ないけど耐えられないでしょうし。

※あと少しで首飾りが完成すると言う右京に対して
朝霧「そんなのもういい!! 右京がいれぱ何もいらない
(りぼん2010年8月号・P.235の3-4コマ目)

 これは本心だろうなぁ。つい最近までまともに会話をすること
すらままならなかった2人、朝霧にしてみれば好きな右京と苦労の末
ようやく恋人同士になることができたのですから、右京の存在は
どんな高価な宝石よりも大切なものなのでしょう。いくら立派な
首飾りが完成したとしても右京がいなければ何の意味も
ありません。

 こんな幸せな時間がずっと続けばいいのにと思っていたのですが
運命はあまりに残酷でした。

○朝霧、今年の人身御供(ひとみごくう)に選ばれる

長(おさ)「儀式に一番必要なのは信仰心です 人身御供の神を
信じる心が少しで曇っていたら 逆に村に災いが起きると
言われている
」(りぼん2010年8月号・P.237の2コマ目)

 これって絶対に裏切って逃走できないように心を縛る目的
だよなぁ。もし村に災いが起こったら自分が愛する人にも危害が
及(およ)ぶから、そのことを考えると人身御供としての勤めを果たさなくては
ならないと自然と思うでしょう。

 信仰心なんていう具体的に見ることができないものを
持ち出されたらもうどうすることもできません。信じる心を
持つよう強制されたら「この儀式に何の意味が」とか考える
ことすらできないですし。


考えた瞬間に「信じる心が曇った」ということになってしまいます。

長「大佐 お願いできるかしら?
(りぼん2010年8月号・P.238の1コマ目)

 これって一応意思を確認している形になってるけど事実上の強制
だよな。どう考えても…断られることを想定しているとは思えません。

朝霧「大任 とても光栄に存じます 朝霧はこのお役目を立派に
果たしたいと思います
」(りぼん2010年8月号・P.239の1コマ目)

 この道以外の選択肢は朝霧に与えられていません。もしここで
朝霧が断ったら地域の目が厳しくなるのは目に見えています。
村を
出る羽目になってもおかしくないだろうなぁ。もし偶然災害が起こったり
餓鬼婆に襲われる人が出たりしたら朝霧のせいということにされるでしょう。

○祝福できない右京

朝霧「祝福してくれないの?」(りぼん2010年8月号・P.241の2コマ目)

 ここで「おめでとう」なんて言う奴はまずいないでしょう。
とても生産的とは思えない理由で自分の愛する人の命が
断たれようとしているのですから納得するわけないですし。

 そもそもこの村の住民の中で人身御供のおかげで村が守られて
いると本気で思っている人はどのくらいいるんだろう? バカバカしい
と思っていても、他の人の目があるからなかなかそのことは言い出せない
という人も多そうだな。

右京「俺がいれば他になにもいらないと言ったじゃないか!!
(りぼん2010年8月号・P.242の1コマ目)
朝霧「そういう言い方は卑怯(ひきょう)よ!!
(りぼん2010年8月号・P.242の2コマ目)

 どちらが言っていることも正しいです。右京にしてみればとにかく
朝霧の命を守りたいと思うでしょうし、朝霧は受ける以外に選択の余地が
ない話が来てしまったのですから、今更右京が何を言おうがもうどうする
こともできないのですから、答えに窮(きゅう)することを言う右京に対して
「卑怯」と言いたくなるのも分かります。

 人身御供の話が来た時点で朝霧が個人的に築き上げた人間関係は
すべて崩壊したんだよ…もう朝霧の存在は朝霧自身や右京のために
あるのでありません。村のためにあるのです。

朝霧「人身御供に少しでも神様を疑う気持ちがあれば
儀式は失敗する…私は長に信頼されたんだわ

(りぼん2010年8月号・P.242の5コマ目)

 ほらやっぱり「疑ったら失敗」っていう設定が心を縛ってるよ。
ここで右京にあれこれ言われて心が揺らいだら、その瞬間から
儀式は失敗の方向へ進むと思ってしまうでしょうし。

 正常な判断力を鈍(にぶ)らせるのにこれほど都合の良い設定って
ないな。

朝霧「人身御供に選ばれたのはとても名誉なことよ 右京にも
祝福してほしいの
」(りぼん2010年8月号・P.243の1コマ目)

 私達からみればバカバカしいとしかいいようがないことですが
朝霧や村の人たちにしてみればこれは外部の人がどう思おうが
このことを信じる以外にないのです。

 もしかしたら私達の世界の常識も他の世界から見ればバカバカしい
ことかもしれませんよ。何が正しくて何が間違っているかという判断の
物差しはそれぞれの土地によって違います。どれが正しくてどれが間違って
いるかということは一概(いちがい)には言えないでしょう。

 桜姫にしてみれば自分の意思に関係なく命を差し出せと言われて
いるのです。もうその運命から逃れることのできない運命であるのなら
せめて心穏やかに最後の日を迎えたほうがいいかもしれません。
人生の最後が強い悲しみと死への恐怖だけだったらあまりに悲しすぎ
ますし。

右京「俺は神様より君を愛してる
(りぼん2010年8月号・P.243の2コマ目)

 右京…ここまで愛しているのであれば、もっと早く朝霧に
告白すればよかったのに。いくら朝霧が冷たい態度をとっていたと
しても乗り越えられだろう。

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