【HAL】〔牧野あおい〕りぼんファンタジー増刊号(2009年) 感想
去年(2009年)のりぼんファンタジー増刊号に掲載された作品の中で
もっとも話題となったのはこの「HAL」でしょう。作品が少年まんが
「DEATH NOTE」に極めて似ているのではないかとの指摘が各方面から出て
ネット上で大きな議論を巻き起こしました。
まぁ掲載から時間も経ち、頭も冷えたところでもう一回読み直しても
たしかにデスノートと本当によく似ています。違う点はデスノートは
ノートを持っている人がノートに名前と死因を書くと名前を書かれた人が
ノートに書かれた通りになくなってしまうのに対して、HALは死神に願えば
望んだ人を最初からこの世に存在しなかったことにすることができるという
点でしょうか。デスノートの場合は死んだということが世の中にちゃんと
知れ渡ってますし。HALには相手をこの世にいなかったことができる人数も
最大3人までという制限もついてますね。
HALとデスノートの最大の違いはデスノートの月(らいと)は人を殺す力に
負けてしまい最終的には身を滅ぼしてしまったのに対してHALのしずくは
最後は人の存在を消す力に勝ったことでしょうか。
○しずくは完璧…しかし
主人公の「宮崎しずく」はテストで学年1位、全国陸上の100M走で
優勝するなど勉強もスポーツも両方トップで学校の中では「ミス」という
あだ名で呼ばれていました。
しずく「…私が2位 屈辱だ」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.206の3コマ目)
2週間前に来た転入生「阿部夕貴(あべゆうき)」にあっさり中間考査で
1位を取られてしまったことから、性格の悪さが全面に出てきてしまい
ました。まぁくやしがること自体は成長の糧(かて)にもなるから悪いこと
ではないんだけど、度が過ぎるとな…
まぁ表面上は夕貴に対して「いいライバルができてうれしいよ
これから仲良くしよう」と言ってましたが、裏ではこういうことを考えて
いたのですね。
○死神「ハル」登場
ハル「俺は死神ハルだ」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.206の3コマ目)
↓
しずく「…悪シュミなコスプレ野郎のストーカーってとこかな
変質者としてもこれは ひどい」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.209の1コマ目)
まぁこう思うのが普通だな。
いきなり自分の部屋の窓からこんな奴が出てきたところで
「あ、死神さんこんにちは」とか言うわけないだろうwwwwww
こんなこと素直に信じる奴のほうがヤバいよ。
ハル「おまえのその他人を見下す優越感 負のオーラ
それこそが俺たち死神のエサだ」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.209の3コマ目)
死神のエサになるほどしずくから負のオーラが出てたのかよ。
よっぽど夕貴に負けたのがくやしいんだろうな。
ハル「つまりだなおまえは俺に願えば望む者を殺せる ただし
3度までだ」(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.209の4コマ目)
こんなことをやっても死神側には何の得もないように見えますが
上に書いたとおり負のオーラがエサなのですから、死神にとっても
利点はあるのですね…とここまで書いていて思ったのですが、誰かを
この世から消すよう頼んだとして願いどおりに頼んだ人物がいなくなったら
負のオーラは出なくなってしまうから、死神は損なのでは???
「3度まで」っていうのがポイントなのかも。人間の欲望には限りが
ないですから、3度の力を使うころには自分の希望する人物を消すという
作業の虜(とりこ)になっているだろうから、その力がなくなった瞬間に
さらに強い負のオーラが出るようになってるのかもな。
最初はこの話を全く信用していなかったしずくですが、ハルが
目の前のゴキブリを見事に最初からいなかったことにしたことから
ようやく信じるに至りました。
ハル「仮に誰かを殺したとして その誰に関わったおまえ以外の
すべての人間からその人間に関する記憶は削除される」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.213の4コマ目)
そもそもこの世に最初からいなかったことになるのですから
しずくが手にしたこの不思議な力の存在が公(おおやけ)になる
心配は全くないんですね。こんな恐ろしい力の虜にしずくがなったら
大変だ。
しずく「私が手を下すほどの価値のある人間ず私の周りにいない」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.214の4コマ目)
しずくの傲慢(ごうまん)な性格が周りの生徒の命を救うことになる
とは皮肉としかいいようがありませんね。
○自分より勉強もスポーツもできる夕貴に怒りを抱いたしずく
周りの生徒の自分に対する目が変わったことから気持ちは
一気に変わり、「ミス」というあだ名で夕貴が呼ばれるようになった
ことからついに怒りが爆発! 禁断の力に手を染めることに
しずく「今すぐそいつを消せええぇっ!!」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.226の3コマ目)
自分の力で1位にならかったら何の意味もないのですが、もう
冷静ではいられなくなってしまったので、1位にいること自体が
目的となってしまったんだな。夕貴は最初からこの学校にいなかった
ことになりましたが、気が抜けてしまったしずくは全国共通模試で
45位に終わりました。
順位なんてあくまでも他人の出来が悪ければ簡単に上がるの
だからこんなことにこだわること自体がそもそもおかしいのです。
そんなことにこれまで気づかなかったのだからしずくは決して
頭が良いという訳ではなさそう。
○「価値のある人間」
ハル「じゃあ1位だったころのおまえが今までに何を生み出し
誰に何を与えてきたんだ?」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.235の1-2コマ目)
まぁ勉強やスポーツをがんばってきたのは確かだけどこれって結局
自分のためであって、他人から見ればしずくは価値がある人間では
ないよな…夕貴が登場した途端に周りの生徒が離れていったのも
ある意味当然。
しずく「…私は今まで欲しがるばかりで…求めるばかりで
自分から与えようなんて考えもしてなった」
(りぼんファンタジー増刊号(2009年)・P.239の2コマ目)
負のオーラを求めてしずくのところにやってきた死神がしずくを
改心させてしまった件についてだが(笑) 上のほうのセリフなんて
熱血教師が性格の悪い優等生に説教をしているみたいだし。
ハルは死神としてはダメダメだったけど、しずくの今後の人生のためには
いいことをしたよね。
夕貴の転入はしずくにとって大きな転機となりました。何が人生に
良い影響を与えるか分からないですね。2位になった時はとても苦痛
だったしずくですが、「良薬は口に苦し」だったのかも。
最後の願いでハルの存在を消したしずく。ハルがいなくなると
すべて元に戻るようになっているらしく夕貴も復活しめでたしめでたし
ですね。
…ということは一番最初に消したゴキブリも復活したのか(笑)
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